プワゾンドールズ #3
- ハッピーエンド クリスマス -
レディオガール
RADIO GIRL
7.ベルヒデンスガーデン
退屈そうに雑誌を眺めながら、少女は時間が過ぎるのだけを待っていた。
パンハイマはしばらく戻ってきそうにない。
テーブルと椅子が数組あるだけの簡単な社内の休憩所で、サチは何度目かのあくびを噛み殺した。
パンハイマに借りた金はほんの僅かで、今手にしている雑誌以上に売店で買えるものは何もなかった。
読み終わったらどう暇を潰そうかぼんやり考えながら目をこする。
ここにサチ以外には誰もいない。時折通路を忙しない歩調でスーツに身を包んだ男女が通り過ぎてゆく。
(叔父さん何やってんのかなー?)
一文字一文字名残惜しそうに文字を拾いながら、サチはふと金髪の少年の顔を思い出した。
そう言えばあのヘッドディスプレイに阻まれて一度も彼の素顔を見た事がない。
今度寝床を急襲してやろうと密かに企み、意識を雑誌に戻した時だった。
足首に何かが絡まっているような気がしてサチは片手を下ろして足に触れた。
指先から伝わってくるのは何か、艶やかな髪の毛のような感触。
靴下の上から素肌を締め付けられるような妙な感覚を不思議に思い、足を上げて足首を眼前に持ってきた時だった。
カーペットの敷き詰められた床に落ちた自らの影が突然裏返った。
事態を理解するよりも悲鳴を上げるよりも速く何千本もの髪のように細い糸に絡み取られ、サチは底無しの沼に足を滑らせた
哀れな犠牲者のように音もなく陰影の中へと飲み込まれて行った。
雑誌だけがプラスチックのテーブルの上に乾いた音を立てて落ち、その場に残される。
意識は明瞭なままだった。
凄まじい勢いで暗転した世界をほんの数秒、旅したのは強烈な耳鳴りと一緒に覚えている。
自分が意識を失ったのかと思えるほどの深い深い闇の中を抜け、放り出された場所に広がっていたのもまた闇だった。
状況の判断に苦心しながら鼻をつままれてもわからない暗黒にサチは投げ込まれていた。
数秒前のいきなり影の中に飲み込まれた時感じていた、内臓がひっくり返るような不快感は消えている。
という事は今は移動はしていない。ここが到着地点なのだろうか。
ポツと遠くに点のような一光が生じた。
「灯りを」
複雑に反射しながらあちこちから聞こえてくる声に覚えがあり、サチは背筋が凍る思いに身をさらされた。
玩具の歯車が軋むような無機質に無機質を重ねた声。
声と同時に、彼方に生じた一光を初めとして火線は発せられた。
あらかじめ壁にすえつけられていた蝋燭達が一斉に光を灯し始めたのである。
「ご無礼をお許し下さい」
おぼつかない足取りで何とか立ち上がったサチに、再びどこからか声がかかった。
鼻腔を湿気のある冷えた空気が満たしている。そして全身を包む息が詰まるほど重苦しい感覚。
「どこ」
精一杯知覚を働かせてサチが悲鳴のように叫んだ。
「失礼。見えませんか」
壁、と言ってもその輪郭さえも捉える事はできないが、そこに整然と並べられた蝋燭たちが不意に増えた。
明滅を繰り返す蛍のように不意に現れたそれらはほぼ壁を一面満たし、ようやく視界を得たサチはすぐに足元の存在に気づいた。
何の気配も放っていない、彫像のような黒い物体に。
短い悲鳴を上げて飛び退いたサチに、ひざまずいていた男はゆっくりと立ち上がる。
関節の軋みとゼンマイの音さえ聞こえそうな寸分も命を感じさせない動作で折っていた上体を持ち上げ、彼はにこやかに笑って見せた。
闇とほぼ同化している黒のタキシードに包んだ肉体は長身だが、身体のパーツのすべてが針金のように細い。
白蝋のごとく白い肌は闇に浮かび上がり、いっそう生白さを増している。
丸眼鏡の奥はもはや何の温かみも感じないガラス球と貸した瞳が鎮座しており、その眼はじっとサチを見下ろしていた。
すらりと伸びた鼻梁は確かに美形と言えるが、それは神でなく人の手により創造されたどこか歪んだ美しさだった。
「御機嫌麗しく…」
後付けされたような笑顔を浮かべ、胸に手を当ててクシミナカタはもう一度お辞儀をする。
マフラーのように首に巻いた、床にまでつきそうな編んだ乳白色の髪がふわりと闇に踊った。
相変わらずの空気が凍りつくような異様な雰囲気に呑まれてサチは一歩あとずさった。
「怯える事など」
震える彼女にクシミナカタは努めて優しく言ったが、サチはありったけの勇気を絞って果敢にも言い返した。
「い…いや、いきなり暗いとこでアンタに会ったら誰でも怖いと思う…」
その言葉を微笑で返して彼は闇の奥へとサチを案内した。
恐らくは廃棄された地下駐車場を再利用しているのであろう、薄闇を進む内にそれはサチにもわかった。
時折黒く塗りたくったような暗黒の中に各所に据え付けられた蝋燭立てに照らされ、金属光を放つ物体が横たわっているのが見えた。
駐車場と運命を共にした乗用車だ。錆を噴いてほぼ朽ちている。
両脇に駐車するスペースを置き、螺旋を描くように道は下へ下へと続いている。
たまに生きている電灯もあり、蝋燭と組み合わせて照明に使われているようだ。
灯りがあるとは言え落とされている闇は押し潰されるような重圧を放っており、まるで地下牢に迷い込んだような錯覚に陥らせる。
最初はランタンを手にしたクシミナカタを先頭に二人は闇の中を進んでいた。
サチは何ら拘束を受けてはいなかったが、逃げられるとは思わなかった。
「ここは廃棄された地下駐車場でしてね、構造が物凄く複雑でワタシ達以外には迷宮も同様ですよ」
クシミナカタはあらかじめそう言って道を歩き始めたが、まだその時点ではサチは逃げられる可能性があると考えていた。
決定的なのは次の言葉だった。
「それともう一つ…ここは『実験』に失敗した産物が闊歩しておりまして。ワタシの言う事さえ聞いてはくれないのですよ、コレが」
さっきからしきりに聞こえてくる、何かの生物が這い回るような音や唸り声が気のせいでないとわかって彼女は戦慄した。
いつか会ったイコンの力といい、常識的に考えていい連中じゃないとサチは自分の事を棚に上げて納得する。
不安と恐怖に押し潰されそうになりながら、半ば闇と同化したクシミナカタの背を追い20分も歩いただろうか?
ずっと闇に響いていた先行のクシミナカタの革靴の音が途切れ、突然彼が振り返ったので驚きのあまりサチはしりもちをついた。
そんな彼女の様子に彼は片眉だけ跳ね上げて不思議そうな表情を作って見せる。
「どうかしましたか?」
「えー…えーっと、なかなかいいコンクリートを使ってますね」
手を貸そうとした彼に構わず地面に手を当てて立ち上がりながら、思わず意味不明の言い訳をしてサチは曖昧に笑った。
ジーンズの埃を払う彼女を背に向け、クシミナカタは闇の一点に手を伸ばす。
サチには何も見えなかったが彼が何かを掴み、横に回転させるとやがて正面の闇を四角く切り取るように針のように細い光が
漏れ始めた。
クシミナカタが手を引くと切り取られた長方形の闇はドアのように開いて漏れた光は量を増し、サチは眼がくらんで手を顔の前に
翳した。
「どうぞ」
眼を細めて光から瞳を守っていたサチに道を譲り、クシミナカタはその中へと彼女を招待した。
部屋の中は不思議な空間が広がっていた。
地平線が見えるほどの広さがあり、白と黒の市松模様のタイルの床は彼方まで続いている。
置かれている頑丈そうな長いテーブルの上にはシルクのテーブルクロスがかけられ、様々な食器やティーカップが置かれていた。
その脇には数人メイドが控えており、開いた喉の下あたりにはクシミナカタと同じく白蝋のごとく白い肌に円形の奇妙な刺青が入っている。
メイド達が全員、一部としてズレなくまったく同時に二人に頭を下げた。
一歩間違えれば悪夢のようなティールームである。
現実とはかけ離れた世界に混乱を促されてサチは頭がおかしくなりそうだった。
「どうぞ」
放心しそうになっていた彼女に椅子を勧めてクシミナカタは彼女と反対側、向かいのテーブルについた。
言われるがままに腰を降ろしてサチはとにかく自分を落ち着かせようと必死になっていた。
これは現実。…多分。
状況を整理すればあたしはさっきまで会社の休憩所で雑誌読んでて、んでいきなり暗いとこに来て、んであのヘンな兄ちゃんと
お茶を飲んでる。
まあひと言で言えばそういうワケだから。
メイドの手により注がれた紅茶に口をつけながら、何とか自分に決着をつけようとしているサチにクシミナカタが先に口を開いた。
「何か聞きたい事があるのでは?」
大して警戒もせずに自分の分の紅茶に口をつけながらサチは考えを巡らせた。
一口飲み込んで顔をしかめ、すぐに手元の砂糖壷を取って直接砂糖をティーカップに注ぎ込む。
がちゃがちゃ耳障りな音を立てながらスプーンで紅茶を混ぜて砂糖を溶かし、そのスプーンをそのまま口に突っ込んで味を見ながら
言葉を返した。
「聞きたいこと?」
増加した糖分に満足し、ず、と音を立てて紅茶をすする。
人前でここまで何から何までマナーを破る人間も珍しい。
ティーカップは洗練された素晴らしく優美なアールヌーヴォー調のもので、紅茶も決して一般人の手に入るものではない。
さっきまでの不安はどこへやら、そのすべてを無視してやけに堂々とサチは自分のペースで物事を進めている。
元から気丈な少女なのだ。
「あたし笑いすぎるとしゃっくりが出る体質なんだけど何で?」
「…」
一瞬、その場の空気が凍りつく。
白くなった空気を破ったのはメイドの一人が堪え切れずに吹き出した声だった。
サチが眼をやった、そのテーブルの脇に控えていたメイドの少女には覚えがあった。
肩より少し長いくらいの、艶やかなストレートの黒髪が美しい美少女 ―― イコンである。
「さあ…何ででしょう。それとは別にあるでしょう? もう少し別の…貴方の身の事とか」
調子を狂わされそうになりクシミナカタが内心呆れ返りながら話を補修する。
目の前にあったクッキーを頬張りながら、サチがもう一度どんな質問をしようか思考を始める。
口の中に甘味を抑えた柔らかな食感とハーブの香りが広がった。
「あたしをどうする気?」
大して悲愴感も漂わせずに彼女が質問を口にした。
「ワタシ達に協力して頂く」
「絶対イヤ」
間髪入れずに言い捨てたサチにクシミナカタが苦笑する。
「貴女はワタシ達をどのようなものとお考えで? まあ、想像はつきますが…我らは人攫いだけが仕事ではないのですよ」
今まで表層上はともかく何ら感情の起伏を見せなかった彼からサチは初めて『電波』を感じた。
僅かに眼を細めたクシミナカタから、何か憐憫のような思いが漏れている。
「昔々…人類を幸福な世界に導こうと努力していた人達がいた。差別も非業もない、幸福だけが満ちる優しい世界に。
その基板となったのがある『少年』…名前はありません。呼び名はただ、『少年』と。
優しすぎるくらいに心の優しい少年だった。誰よりもいつも誰かの事を考えていた。人が死ねば誰よりも悲しんだ…
ある日、その人達は考えた」
半分も理解できずに呆気に取られているサチに構わず彼は続けた。
まるで自分の記憶を再び自分に刻み付けるように。
ゴッドブレインプロジェクト
「その少年が『世界』ならば、求めていた世界を作れると。『神 脳 計 画』などと呼ばれていましたがね…
しかし同時にどこかで生まれたのが、少年とは正反対の悪意の存在…こちらは便宜上『妹』という名がついていました。
つまりそれがナイトメアウォーカー。ワタシ達が感じ取ることのできる存在なのですよ」
「なに? なんだって?」
サチが胸に湧き上がる不安に耐え切れずに聞き返したが、クシミナカタは笑ってその質問を受け流した。
「『連中』はナイトメアウォーカーの正体を掴む為に必死だった。そこである社に依頼し作ったのが他人の発するやり場のない感情、
つまり悲しみ、怒り、嫉妬…それらを電波のように感知できる知覚『アクティブアンテナ』を持つドールズ、エクトプロイドです…
恥ずかしながら」
枝のように細い指で彼が不意に上着を脱ぎ、シャツを剥いで上腕を露にした。
透き通りそうなほどに底無しの白さを放つ肌の上腕に刻まれていたのは二つのバーコードだった。
確かにそこには数字と縦線の羅列に混じって『Osiris・chronicle』とある。
「ワタシ達の目的はナイトメアウォーカーを今までのように断片的なものでなく、完全な形で具現化すること。
何故そんな事を、と聞かれても困りますが…敢えて答えるのならば、それが私の生まれた理由なので」
準備があるからと言ってクシミナカタは姿を消し、サチは別の部屋に通された。
案内を務めたのはメイドの服に身を包んだイコンである。
クシミナカタの時と同じく闇の一部分に手をかけて引っ張ると、ドアのように開いて別の空間が現れた。
二人の少女を迎えたのは色とりどりの色彩だった。
キャンバスのようなクリーム色の壁紙が貼られた居間のような部屋で、整然と家具が並べられている。
物は多くなく妙に生活臭のしない部屋だった。
そして眼を奪うのは天井、床、壁までほぼ隙間なく水彩絵の具のような柔らかなタッチで描かれている絵たちである。
統一性はなく思いついたままのものを描いているらしく、人物、月、夜空、建物、鳥…と様々なものが自由に存在していているが
不思議とすべてが調和を見せている。
サチとパンハイマがいつか見たイコンが作り出した怪物の馬と絵の感じは同じだが、絵柄は限りなく優しく安心を誘う。
「あの人の『準備』は時間がかかるわ。しばらく待って」
別の部屋に引っ込んでいたイコンが姿を現す。
絵画中についたものだろう、絵の具のたくさんついた白いズボンと上着の病院の患衣のような飾り気のない質素な服に身を包んでいる。
「好きにしてていいわよ。だけど逃げようとはしない方がいいと思う…クシミナカタから聞いたでしょ。
ここの闇の中を彷徨ってる怪物の半分は元は私の絵よ」
それだけ言うとサチを放っておいてイコンは壁の一面に向かい、パレットと水の入ったコップを脇に置いて手にしていた筆を持ち上げた。
壁に筆を走らせるイコンを何となく見つめながら、サチは考えをまとめようと木製の椅子を引いて腰掛ける。
無言で絵の具を溶いていたイコンが不意に声を発した。
「見える?」
「えっ」
どこか感情を押し殺したようなその声に、サチが頬杖をしていた顔を上げる。
「何が?」
「『あの子』が」
壁に塗りつけている絵の具から視線を移動させずイコンがそう答えた。
サチが周囲に視線を巡らせたが、この部屋には二人以外誰もいない。
「貴女はクシミナカタと同じ力を持っているんでしょう?なら見える筈」
「『電波』の事?」
後姿のイコンが微かに頷くのが見えた。
敵の言う事を聞くのは癪だが気分を損ねて何かされても困るので、サチは大人しく瞳を閉じて意識を集中させた。
周囲の空気の流れさえも敏感に感じ取れる、全身がアンテナになるようなイメージを思い浮かべて研ぎ澄まされた神経は目の前の
少女が放つ微かな電波の受信を可能にした。
「私はドールズだったの。子供ができない病気のある夫婦の、ね」
サチの言葉を待たずにイコンが話を始める。
「でも私は理想じゃなかったみたい。ある日全然自分が両親に愛されてないって気づいたの。
そう認めてしまったら私はイコンではなくなるような気がしたから、私は愛されていないのを全部『あの子』のせいにした。
私が頭の中で作り出した、誰でもない『あの子』。
私じゃない、嫌われてるのは私じゃない。全部あの子が悪い、あの子のせいだって…」
一心に筆を走らせながら語るイコンの表情はサチにはわからない。
だけど色のない電波が僅かに膨れ上がるのは感じ取る事ができた。
「ある日、いつだったか『あの子』が私に話し掛けてきた。何で私を生み出したの?何で私を苦しめるの?
何で自分がされたイヤな事をまた私にするの?って。私は絶対に救えない存在を私の中に作り出してしまった。
いつもいつも罪悪感と『あの子』の声で頭がおかしくなりそうなの。今もその子は私の中にいる。
…クシミナカタはわかってくれるから…私の中にいる『あの子』をわかってくれるから、私はあの人を愛している。
いつか『あの子』を消してなくせる方法を考え出してくれる」
黙って聞いていたサチに不意に筆を置き、イコンが振り返った。
頑なに変えなかった表情に僅かに動きがある。
「見える?『あの子』が」
彼女に向き直り、数歩イコンが前進した。
瞳に懇願するような光を認めてサチは言葉に詰まる。
「うーん…えーと。そうだな」
彼女と噛み合っていた視線を外し、慌ててサチが言葉を探して中空に眼を彷徨わせる。
どう言えばいいかわからない。
彼女にまとわりついている微かな、しかし底知れないほど深い電波はサチも初めて触れるタイプのものだった。
何時の間にか相手が敵だと言う事も忘れて、できるだけ彼女を傷つけないようにサチは慎重に言葉を選んで声にした。
「女の子が見える」
「?」
眉をひそめたイコンに取り繕うと慌てて曖昧に言葉をぼかしてサチが続ける。
「えーと、あー、うーんとね。その…女の子が泣いてる。あんたの言う『あの子』だけど…
その。アンタと一緒でさ、口ではムカつく事ばっか言うんだけど…多分」
見たままを話そうとするがどうにもうまくいかずに、彼女は舌が絡まりそうだった。
「助けて欲しいんだと思う、『あの子』は。捨てるのは無理じゃないかなあ、だってその子はアンタじゃあないの?
何てーの、助けられるのきっとその…アンタだけじゃあないのかな」
自分の言葉に無言で顔を背けたイコンの反応を見、サチは内心マズい事を言ってしまったんじゃあないかと青ざめたがイコンの
胸に彼女の言葉はしっかりと刻み込まれていた。
胸の前できつく握った彼女の両の拳に、一滴の涙が落ちた。
「クシミナカタはサチの身体をベースにナイトメアウォーカーを具現化させる気なの…私の絵や久牢の影みたいに何かに『電波』を
込めるんじゃなく、アンテナを持つ人間自体がナイトメアウォーカーと化したら誰も止められなくなる!」
泣き崩れた彼女の前にしゃがみ込み、その顔を覗き込んだパンハイマにイコンは悲痛な声で哀願した。
「『あの子』を助けてあげてって言ってくれたのはあの人が初めてだった…お願い、サチを助けてあげて」